5月11日〜12日にかけて大雪山・裾合平周辺の山々を歩き、登り、滑って来ました。
まだ緊急事態宣言こそ出ていませんでしたが、コロナの感染者は増加中のタイミング。
検温等の体調管理をしっかりとして、この日を迎えました。
当日は勤務が終わり次第、寄り道もせずにほぼノンストップで旭岳温泉へと移動。
夜11時30分、一人、夜の山へと歩き出します。

昼間緩んだ雪は凍りつき、ちょっとした傾斜でもスリップしそうになります。
新月に近いこの夜は本当に暗く、、、

天女ヶ原では天の川と満天の星空が迎えてくれました。

振り返れば旭川の街の光。
今、人間の世界から離れて歩いている事を実感します。
ここで自分の身を守れるのは自分だけ。
僕にはライトで照らしている場所しか見えませんが、
五感を研ぎ澄ませ、見えない先のルートや山の息遣いに
想像力を膨らませながら登ります。

およそ1時間30分ほどで姿見に到着。
ほぼ新月の夜なので、肉眼では全く姿が見えない旭岳。
カメラを向けてスローシャッターを切ると、やっとその姿を見ることができました。
今回は、まずは旭岳を右手に感じながらぐるっとトラバースして行きます。
天の川を背に歩いてきた自分のトレース。左手の山が旭岳。広角レンズで撮ると小さく見えますね。この先のトラバースはカリカリに氷化した雪面が続き、緊張感のあるものでした。スキークランポンを装着し、暗闇の中を歩き続けます。何度も歩いたルートで地形も頭に入っていたので、一歩一歩、自分を信じて。
緩い地形を繋いで歩きますが、落ちれば急斜面に吸い込まれる場所もあります。緊張感のある場面でした。
ようやく見えてきた当麻岳。
旭岳や当麻岳に囲まれた平な地形が裾合平と呼ばれています。
夏は熊が悠々と餌を食み、チングルマの咲き乱れる場所ですが、
今は雪と氷の世界です。

朝3時過ぎ。山の向こうには太陽の光が見え、鳥の鳴き声も増えて来ました。
この先に僕の行きたかった場所があります。
日の出は目前。まだ標高差300m少々を残しているので、ここからはダッシュで!!

4時1分、中岳分岐に到着。
赤く染まった東の空から太陽が姿を表しました。

そして、太陽が登るにつれて現れる光の道。
目の前の平地はお鉢平と呼ばれ、
約3万年前の爆発的噴火でできた巨大なカルデラです。
そこから流れ出す唯一の川が赤石川。
朝日が、ちょうど川の流れを遡って、お鉢平を照らしています。
しっかりと計算をして来た訳ではありません。
ただ晴れるから、この時間にこの場所に立とうと思って歩き始めました。
目の前の景色の想像以上の美しさに言葉を失いました。


ずっとそばにいた、エゾユキウサギ。
繁殖シーズンなので、周辺では何羽ものウサギが追いかけっこをしていました。
この子は陽の当たる場所でじっとして、、、
太陽の暖かさを噛み締めていたのでしょうか。
日の出の時間の動画は以下のリンクからご覧下さい。
すっかり昼の世界になった大雪山。この写真の時間は5時20分。ここまでで行動開始から6時間ほども経っていますが、まだまだ旅は終わらず、もちろんたくさん滑って来ました。滑り編はまた次回、お送りします。
北大店 双樹