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秀岳荘スタッフみんなでブログしちゃいます。


by shugakuso4
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ウェンシリ岳東面直登沢~道北最難関クラス「!!!の沢登り」~


ウェンシリ岳(1142.3m)
アイヌ語で「険しい山」「悪い山」などの意味がある。
道北の北見山地中央に位置している。
夏道でも、スタートから急峻な上りが続き、大きい岩を登り越えたり
わずか1000mちょっとしかないが、険しい道のりだ。

険しい渓谷に囲まれながらも
往復6km。
ここ最近の自身の登山スタイルが20km、30kmなど当たり前
時には、50kmを越える日帰り登山をしてきた

急峻とはいえ、6kmなんて、、、

そんな気持ちが心のどこかにあった。
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ところで、今回のタイトルにもある「!!!の沢」とは一体何のことだろうか。

北海道の夏道はもちろん、積雪期クライミング、岩、沢ルートが地域ごとに収録された本がある。
北海道のクライマーがボロボロになるまで熟読している。
山を愛する者のためのマニアックなガイドブックである。

【北海道の山と谷】1977年(昭和52年)に、
大内倫文氏、堀井克之氏によって編纂された北海道の山岳ガイドブック
※北大店では3階で販売中
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「!」とはそのルートのレベルのようなもので大きく分けて3段階ある。
(中には、「!*」などもあるため細かく分類すると6段階)
レベルとは言っても、感じ方、捉え方は人それぞれであるため
あくまでも目安となる

「!!!の沢」は中でも難しくて、クライミング要素はもちろん、雪渓の処理、複雑な地形
沢登りの総合力が試される。中には、危険な高巻きや逃げられないゴルジュ帯、何メートルも泳ぐ箇所が出てくる。
道北には、「!!!の沢」が何か所かあるが、これ以上もない。
ゆえに、今回のルートは道北最難関クラスと言える。




前夜は、ワクワクとドキドキが止まらず、3時間しか寝られなかった。
目をつぶりながら、想像して、滝を登るイメージ、支点の確保、ケガをした時の対処等
たくさんのシミュレーションを繰り返した。

今までに「!!の沢」の経験があったが
「!!!の沢」となると想像がつかなかったために
出来るだけの想像を膨らませた。








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札幌から登山口まで高速で3時間半~4時間ほど
今回は、旭川に前入りしていたために2時間ほどで到着
トイレは、登山口にありますが、コンビニは早めに確保するとよい

駐車場で準備を済まして
無事に帰れるように祈る





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舗装された道路を少しばかり歩く

※ここは、有名な観光スポットであったが、2001年に崩落事故があり
「氷のトンネル」への観光の立ち入りは禁止されています。



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すぐに入渓ポイント
この時点では、非常に穏やかな沢の流れだ



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すると、すぐにゴルジュ帯に突入
「!!!の沢」が頭角を現す



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大人の胸くらいまで水が浸かる
前半から水に浸かるのは出来るだけ避けたい





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手足をうまく使いながら、壁に突っ張りながら進む
こんなのばっかり



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こんな滝を前半だけで
何個も越える。
「!の沢」だとF1に含まれるだろうが
ここでは、もはや平地としてカウントするしかない


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これがF1の滝のようだ。
左岸の乾いたところを登る。
高度感が少しあるため、
この時点で、パーティーによってはロープを出すであろう。


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今回は、僕の山の師匠と2人パーティー
3人の方が怪我した時のリスクを最小限にすることができるが
2人の方がロープを出すシーンなどでは圧倒的に早い

師匠は、岩、沢、雪全てのジャンルをこなし、
ヒマラヤも登る本物の山男

僕は、この夏、びっちりしごかれて
一緒に壮絶なトレーニングを積み重ねた
今日は、その集大成だ





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こんな滝が、何個も何個も続く
1人では乗り越えるのを少し苦労するところを
後ろから押してもらったり、足場を作ったり、
手を貸したりなどなど
とにかく2人で協力しながらスピードを上げる
(師匠が滝を登るのに手を貸してくれるなんて、不思議な気分、、、)



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3段の滝
もう、すでにお腹いっぱい
全てが微妙に登りにくく
滑りなどいやらしい




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自然の作る芸術品



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『氷のトンネル』
時期によっては、ここまで雪渓で埋まっていたりなど
雪渓の処理に奮闘することもあるようだ

コンディションは絶好調だ

この手前の滝も、意外と手こずるため
ロープを出します

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氷のトンネルは、なんとも幻想的
と言っても危険地帯のため素早く通過


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トンネルを潜るとまたすぐに滝を越えて
雪渓が崩壊したデブリ地帯に出る。


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デブリ地帯は、霧に包まれ
冷たい空気と温かい空気が交互に来る不思議な世界

すると、左奥には何やら怪しく光るものが見えてくる






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ここが北海道の山と谷にも掲載されていた
通称『幻の50m大滝』


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 ここに来るために来たと言っても過言ではない
写真では伝わらないが
近くから見るとかなりの迫力




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記念に一枚
もう2度と来ることはない。


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周りには、雪渓の崩落跡
これが落ちてくることを考えると鳥肌が止まらない







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50メートルロープを持ってきていたが
せっかくの幻の滝を目の前にしてリードしないわけにはいかない

2人で分け合いっこ
5mほど上がった安全そうなところでビレイ

1P目:30m 師匠リード
2P目:15mあさきリード




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1P目:師匠トライ
左上に見えるのが師匠
もうあんなに小さく見える

フォローで登らせてもらったが、ヌメヌメしていていやらしい
徐々に増していく高度感はたまらない
沢登りでこんなにも高さを上げて爽快な登りをするのは初めてだ。
水温がなぜか暖かく気持ちが良い

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2P目:アサキトライ
ヌメヌメしていて前半は怖さがあるが
後半はホールドもしっかりしていて快適な登り



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映えてるぅ〜!!

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終了点に残置はなく、立木もない
50mの高さからの景色は圧巻だ

個人的には1P目の方がむずかしかったかな

終了したと思いきや、すぐに現れる滝の数々
もう数十個登った


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徐々に溜まる疲労感
ザック、ロープは水に濡れたため重さは1.5倍になる



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それでも、高度を上げていく







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ようやく休憩と思いきや
二股左側には、怪しげな谷地形
嫌な匂いしかしない






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よくよく見ると遥か奥まで滝が続いている
疲労もすごいのに
今さっき高巻きして腕が少しパンクしたばかり
絶望感




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幾度となく滝は現れる。
師匠は進む
ひたすら突っ張って
でも落ちたら怪我もしそう
恐怖感と戦いながら
こんなのばっかり




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もう腕が攣ってます




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この連続した写真は、
同じように見えますが全て違う滝です。
まるで滝が影分身の術を使い
僕らを苦しめます。

本当の核心部分は、辛すぎて写真も撮っていません
使えるものは、すべて出し切り登りました。





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ようやく最後の詰めかと思いきや出てくる
2~3mほどの滝
重い荷物とこの疲労感では、なんともつらい
それが1個や2個で済まないところが「!!!の沢」
中には、直登不能なために高巻きしなければならないところもある
このまま尾根に乗っちゃえばいいじゃん!
しかし、そうではない
この沢のルートは、東面直登
あくまでも沢の直登にこだわる





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これがようやく詰め
藪が少しばかり濃くなるところもある





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斜度がなかなかなので、
落ちるとズルズルいきそうだ
灌木につかまりながら登る
気が付くと左手が血まみれになっている
これまでの集中力を物語る





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ちょっとばかりの藪を漕いで






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23年間の人生最高の瞬間






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たった往復6km。
片道3km
舗装された道路も歩いているので実質2kmくらい
この中にどれだけのものがつまっていたのだろうか

滝を登るとまた現れる
それを何十回繰り返したか
まるで沢全体が一つの滝のようにも思えた
休みどころなんてなかった
恐怖感と戦い、何度も全身が痺れた
これが「!!!の沢」



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天国の夏ロード


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オホーツク海も見えます
右側には、先程の登ってきた険しい渓谷



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大きな岩場を下ったり
傾斜がなかなかだ

師匠は、足が痛いと言いながらも止まらない。
僕も、熱中症気味なのと、下りで足の指が靴擦れを起こしてつらいが止まらない。

師弟の無言の戦い。






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沢登りには3つの達成感があると感じます

①核心と言われる難しい滝を登った時
②頂上に立った時
③すべての苦しみから解き放たれて、下山した時

これだから沢登りは面白い
大自然に感謝です

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「!!!の沢」を越えて
ようやく、北海道の沢ヤと名乗れます。

※沢登りは、非常に危険な遊びでもあります。
ここまで来るのに毎日のようにジムに通い、ロープワークを学び、出来るだけの安全確保を学びました。
沢登りをする際は、十分に理解している人と行ってください。




今回の沢登りの様子です。




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辛かった苦しかった早く帰りたいと何度も思いましたが、
帰ったらまた次の目的地探しをするため
北海道の山と谷を見ていました。

北大店ウェア売り場 あさき





























by shugakuso4 | 2022-09-11 12:36 | 自然遊びレポ