こんにちは。
今季の活動エリアがカミホロ(上ホロカメットク山)に定まった北大店あさきです。
前回のブログに引き続き、今回もカミホロ登攀(=岩壁ルートなどを登る登山スタイル)です。
一面銀世界の美しい冬山。楽しい雪山。そんなブログを期待している方々の反面、
ゾクゾクと手汗を握りしめながら感じるスリルしかない山に興味がある方も少なからずいる事でしょう。
先日、
世界を代表するアルパインクライマー山野井泰史さんの映画「人生クライマー山野井泰史と垂直の世界完全版」を拝見させて頂きました。正直、レベルが高すぎて手汗というより手滝という感じでした。憧れとはまさにこのこと。
ぜひ見に行っていただきたいです。
そんな映画のような緊張感が伝わればよいのですが、、、
12月12日 上ホロカメットク山 正面壁にある『三段ルンゼ』と呼ばれるルートでピークに登頂してきました。
メンバー:あさき・以前も登場した師匠のSINさん・Mさん
6時半 凌雲閣スタート 予報通りのスッキリとした空模様
安政火口を経由して北西稜の尾根を目指して進みます。
カミホロ北西稜はカミホロアルパインクライミング入門ルートで岩壁というよりは、稜線歩きに近しい易しいルート。
先月、北西稜ルートを登り、そこから右手にちらちら見えた氷の張ったそそられるルンゼルート(=水の浸食によって削られてできた溝の地形)。
それが今回目指す『三段ルンゼ』だ。調べると「北海道の山と谷2」にも載っていて、
この1か月行きたくて行きたくてトレーニング(帰宅ラン、懸垂トレーニング、ロープワークなどなど)を積んだ。
空が明るくなってきた。化け物岩、八つ手岩、カミホロピークがはっきり見える。
左カミホロ正面壁、右八つ手岩
気温は、氷点下10度、天気は良いが動かないと身体は冷えていく
北西稜とりつき前(=目的地の入口のようなもの)に、通常は、スノーシュー・ストックなどデポ(=荷物軽量化のために置いていく事)していくが、
今回は、天気が良すぎるため、頂上へ行ってからも遊べそうな予感がしたためにノンデポ。
北西稜の尾根
尾根沿いのラッセル(=深雪のところを踏み固めながら進むこと)
まずは、北西稜第1岩塔、第2岩塔をフリー(=ロープは出さず登る事)で越える。
※初心者の方には、ロープで確保してあげてください。
第2岩塔を越えたところでもう見える三段ルンゼの全貌。
小滝を三段超えるから三段ルンゼと呼ばれているのだろう。
ここから、とりつきにトラバース(=斜面の横移動)。雪の状態によっては雪崩れそうな斜面。今日はカチカチだ。
近くから見るとこんな感じ、なんか奥におる〜!
とりつきには、残置(=先人達が残したハーケンなど)など見つけられず、
アックスとカム(=岩のすき間に挟めて使う道具)でビレイ(=登る人をロープで確保すること)
1P目 トップ あさき
ここが核心。上手くプロテクションを取りながらハング気味の氷の張った小滝を越える。
薄い氷アイゼンの爪が刺さらず腕力に頼る。アイススクリュー10cm1本、13cm2本持って行ったがすべて使えた。
スノーシュー、ストックをデポしていかなかったために、ザックの重量に負けそうだ。
核心部でかぶり気味に突き出ている氷瀑がザックに引っ掛かり腕がパンプしそうだ。
仲間の応援が励みになる。
核心部を一気に上がり、パンプ寸前の腕を休めながら効いてるのか分からないイボハーケンでプロテクションをとる。
氷が薄くてアックスがカキンッと跳ね返される。昔やっていたドラクエのゲームで絶対に勝てない魔王と戦った時を思い出した。
何とか雪田に出ると無線からロープ残り10mの声がする。
仕方なくイボハーケン(=凍った草付きなどに効くハーケン)とアックスで終了点を構築。
疲れすぎて、ザックにぶら下げていたスノーバー(=結構長めの固い雪の層に埋めて使うもの)の事なんて頭になかった。
1P終了点から振り返る
2P目 トップSINさん
2P目は、ほぼ雪田歩き。快適に硬いしまった雪にバチバチアックスとアイゼンが効く。
3P目 トップ あさき
核心は終わったと余裕をかましていた。
3P目は、三段ルンゼの2段目と3段目がある。
あとは、たいして難しくない。そんなのは、少し甘かった。
ここのピッチは難しくはなかったのだが、とにかくプロテクションが取れない。
2段目手前で、スノーバーを1本使う。あと一本は終了点のために取っておきたい。
ぐずぐずの滝には、全くアイススクリューが決まらない。
いいメンタルトレーニングだと自分に言い聞かせる。
これは、落ちたら10m以上はさよならだと思いながら仕方なくイボハーケンでとったつもりになる。
こちらがイボハーケン
凍った泥付きなどに効く
!!??????
僕のイボハーケンには、おにぎり君がいる。
同じ売り場の山田氏の落書きに違えない
これがシビアなシーンで少しばかりの勇気をくれたりもする。
勇気を出して3段目へ乗り越す。
すると小滝の抜け口に現れたのは、ツンツンスネ夫の髪の毛みたいなシュカブラ雪庇(=強風でできたとされる雪の芸術)
これまた、被ってるからザックが引っかかる大きさ。
なんとか、滝の手前でクラック(=岩のすき間)を掘り出しようやくとったトライカムを信じて、きわどい場所で除雪作業員。
スネ夫の髪の毛を上手にカットしていく。なかなかの剛毛で、腕もそろそろパンプしてきたところ。
エイっと思い切りアックスを奥に振る。
ようやく雪田にでて、稜線が見える。
隣の北西稜のパーティの声がする。
稜線からは、暖かな光
ようやく得た安心感。まるでコタツの中で飲むちょうどいい暖かさのココアが提供された気分だ。
ここでは落ち着いて、スノーバー、イボハーケン、アックスでビレイ。
ロープを手繰る腕が時々ピキッと攣りそうになる。
一瞬ガスってきた。火山ガスの香りがプンプンして、違う意味で死にそうだ。
通常4ピッチのところを3ピッチできる。あとは、フリーで稜線へ
ここからは、1分もせずにピークへ
天国行き
次はせっかくなので、リニューアルしたカミホロ避難小屋を拝見しに行きます。
新築の木の香りが漂ってました。
中身の写真は撮り損ねましたので、ぜひご自分の足で見に行ってください!
三段ルンゼから登ったので、三段山にも登りたくなった我々は、OP尾根から三段山を目指す。
OP尾根と三段山
細尾根
ここからは、ラッセル祭り
先ほどの登攀で、ふくらはぎをやられた私はまるで雑魚キャラ
平成のラッセルマシーン(?)と言われた(?)あさきくんも使い物にならず、タイムアップ。
夫婦岩付近を目掛けて下山開始
ぜひ三段ルンゼ〜三段山 リベンジしたいです。
今回は、なかなか痺れる登攀になりました。
今日のカミホロは笑っていてくれました。
これが本当の姿ではないことはわかっている。
それでも、山はすっかり冬でした。みなさんお待ちかねのシーズン到来ですよ。
北大店ウェアコーナー あさき