こんにちは、白石店登山売場小山田です。
4回に分けて今年6月のパキスタンス・パンテーク峰遠征について
アップさせて頂きましたが、今回は番外編として
初めてのパキスタンで感じたこと、エージェントの事、ポーターの事、
遠征で使った装備品を含めて遠征あれやこれやを思いつくままに書きたいと思います。
番外編以外は↓をどうぞ!
【パキスタン】
まずは、パキスタンについてですが、南アジアに位置し、
インド、アフガニスタン、イラン、中国などと接しています。
核保有国であり、ちょっと怖いな~というイメージを持つ人もいるかもしれませんが、
滞在中に治安に不安感じることはありませんでした。
パキスタンはイスラムの国ですが、あまり強く宗教色を感じることは少なかったように思います。勝手に少し排他的なイメージを持っていましたが、パキスタンの人々は多くが友好的で素朴な方が多く、むしろ同じアジアの国の人々という事でとても親しみやすかったです。ただ、イスラマバードについた初日に深夜3時頃にホテルの外で大音響で突然コーランが流れ出したときはさすがに驚きました・・・。(写真はアランドゥ村でのポーター達) 首都のイスラマバードは人口100万人を越える大都市ですが、
北へ向かうと、K2やナンガパルバットなど8000m峰5座を含む
巨大な山岳地帯があります。
6000~7000m峰は100座以上もあり、
スパンティークはK2などがあるカラコルム山脈にある7000m峰の一つです。
ただ、エベレストをはじめ山ばかりがあるネパールと違い、
パキスタンの山岳地帯は概ね北部に限られるため、
イスラマバードで話した人の中には
「パキスタンの山はK2とナンガパルバットしかしらない」
「スパンティーク?どこにあるのその山は??有名なのかい?」
と山に関心のない人もかなり多い印象を受けました。
通貨は
パキスタン・ルピーとなります。
イスラマバードではクレジットがほとんど使えますが、
スカルドゥではちょっと小さな店では使えず、
ポーター達のチップを含めて現金が必要な場面も多かったです。
日本ではパキスタンルピーは手に入りにくいので
入国後にアメリカドルで両替しました。
食事はやはりビリヤニやカレーが多かったですが、
どれも美味しくあと数か月滞在しても飽きることはなかったと思います、僕は。
帰国してもう数か月経ちますがまた
あのパキスタンカレーが食べたくなります!
あと、やはりお腹を壊すことがほぼメンバー全員一度はありました。
ま、仕方なのかもしれません。。
あと、やはりイスラムの国なのでお酒は手に入りません!
それがこの遠征で一番つらかったことかもしれません。
【エージェント】
エージェントとは今回の僕らのような遠征隊やトレッキングなどを企画、
コーディネートしてくれれる現地のコンサルティング会社となります。
良いエージェント会社を選ぶことが遠征の成功への第一歩、
と言っても過言ではありません。
遠征を決めて初めの作業は
このエージェントを探すことでした。
まわりの山仲間からの情報で、ここなら間違いないと
勧められて選んだのが『ATP=Adventure Tour Pakistan』です。
(写真はスカルドゥにあるATPのヘッドオフィス)
パーミッションと呼ばれる登山許可証の取得や
パキスタン国内での飛行機や車などの移動手段、宿の予約、
空港への送迎、ポーターの手配はもちろん、
ベースキャンプ(BC)スタッフ、BCでの隊員の個人テント等々、
エージェントは遠征に必要なすべての物を手配してくれます。
準備段階でATPとやりとりしたメールは
何十通にも及びます。
こちらの細かい要望にも大変よく対応してくれました。
上の写真は遠征に同行してくれたATPスタッフで
ガイドのグル、コックのアミンです。
グルとアミンの他にも3人のスタッフが
BCスタッフとして僕らの遠征をサポートしてくれました。
時には相談相手や話し相手にもなってくれたスタッフ達で
またいつかパキスタンに行ったら
彼らに会いたいです。
【ビザ】
パキスタンへ入国する際にはビザが必要になりますが、
その申請はすべて電子申請でWeb上で行なわないといけません。
サイトを見ると、簡単そうに初めは思いましたが、
かなり大変でした・・・。これはやってみると分かると思います。
しかも一か月ほどで発給されると
ありますが、
なんと3カ月もかかりました!
あまりに遅いので問い合わせようにも問い合わせ先が不明・・。
東京の在パ大使館に連絡しても
「担当ではありませんから分かりません。」といわれるのみ・・。
飛行機のチケットを取ったら
まずはビザ申請を早めにすることをお勧めします。
【登山許可証】 ビザと同じく絶対必要なのが登山許可証いわゆるパーミッションです。
パキスタンの場合は6500m以上の山を登る場合は
パーティ単位でこのパーミッションが必要になり、
その山の標高により価格が違います。
またパーティの人数が8人以上になると一人増えるごとに
金額が加算されることになります。
上の表は2024年のパキスタンの
パーミッション料金です。
8000m峰になると一気に金額が上がり、
またK2は別料金での設定となっています。
ただ、通常はこのパーミッションの取得は
エージェントが手配してくれるので自分たちですることはないと思います。
【航空会社】
現在、日本とパキスタン間の飛行機を運航しているのは
中国南方航空、カタール航空、エディハド航空など
いくつかの航空会社がありますが、
一番チケットの安かった
タイ国際航空を選びました。
バンコク空港乗り継ぎの成田~イスラマバードの往復のチケットが約16万円。
また復路便は日程変更の可能性も考えて
変更可能便(openチケット)にしました。
超過手荷物には注意が必要で
1kgオーバー毎に1万円もかかります。
行きは乗り継ぎ時間に余裕があったので
バンコク空港で少しゆっくり出来ました。
ここは多くの国際便が発着するとても大きな国際空港なので
迷ったら大変そうでした。
往路は14時間10分、復路は12時間25分のフライトですが、
途中の乗り継ぎや機内食も出たりするので
それほど長いと感じませんでした。
機内食もどれも美味しく、
ドリンクはビールも飲めたので個人的には満足でした。
【スカルドゥ】
K2やナンガパルバットなど登山やトレッキングの
玄関口となるの街がスカルドゥです。
インダス川とシガール川という大きな川の合流点にあって、
周囲を山々に囲まれて
大都会の首都イスラマバードと比べれば小さな街ですが
登山の準備をするのにはここの方が登山用品店や
行動食などの食品も揃っていて便利だと思います。
イスラマバードに比べると100倍は過ごしやい街です
スカルドゥ・イスラマバード間の飛行機は
以前は欠航が多く、陸路(車)で二日間近く掛けて移動することも
あったそうですが、最近は結構もほとんどなく、
1時間ほどのフライトであっという間です。
飛行機の窓からは天気が良ければナンガパルバットを見ることもできます!
【キャラバン】
最奥の村であるアランドゥ(2770m)からスパンティークのBC(4300m)までは3日間のキャラバンでした。
写真の日付は往路の日程です。エージェントから頂いた日程表では毎日4~6時間の行動時間とありましたが、ポーター達はそれぐらいの時間で歩いていましたが、ぼくらは6~10時間くらい掛かりました。ただ、このキャラバン中で標高は3000mを越えていくので高所経験の少ない僕らにはゆっくり歩くのは順応的にも丁度良かったのかもしれません。日本では見れない氷河と5000~6000mの山々を見ながらゆっくり歩くのもとても貴重な経験でBCまでのキャラバンだけでも十分刺激的でした。
【BC(ベースキャンプ)】スパンティークのBCは標高約4300mです。
既に富士山よりも高い場所にあります。
この写真で見るととんでもない場所にある様に見えます。
まさに崖の上!!怖そう!
斜面の真ん中で風が吹いたら氷河まで飛んでいきそうにも見えますが・・・。
実際はBCの場所は丁度傾斜が緩くなっているところで、
雪崩の危険性も少なく、まさにここしかない、という場所なのです。
BCにはメンバー1人1人のテントの他に、
また多くの遠征隊がこの場所をBCに選んでいるので
あらかじめ整地がされいる状態で、そこに僕らも
キッチンテント、メステント(食堂)、
トイレテント、シャワーテントを設営しました。
【高所キャンプ食】
消化の良さや調理時間の短さから
α米+フリーズドライを基本としました。
これに薄切り餅やポテトフレークやかぼちゃフレーク、
自作の乾燥野菜等を加えました。
上部キャンプには最長で11泊する計画だったので
登山隊員6名×11泊分(朝・晩)=132食分!!
上の写真は出発前の準備で
全ての食糧を揃えたところです。
並べてみると圧巻です!!
3分でできる
『モンベル・リゾッタシリーズ』は
どの味も美味しく全員から好評でした。
ただ、高度が上がるにつれ、
食欲が落ちるメンバーも多く、
一食分を食べきれない場合も見られました。
そしてお茶類もたくさん持って行きました。高所では高度障害の予防のためにも
沢山の水分を取らないといけません。
僕らは一日4リットルの水分摂取を目安としました。
写真は僕が自分用に用意していったお茶類です。
実際にはこの倍くらいの量を持って行きました。
この他にもスポーツドリンク、アミノバイタル
等などもたくさん持って行きました。
歩いているときも、食事の時も、食事の後も、
寝る前も、そして夜目が覚めた時も・・・
とにかく水分を摂るように心掛けました。
【行動食】
行動食は各自で用意することとしました。
全て日本から持ち込むメンバーもいましたが、
僕は半分近くはスカルドゥで調達しました。
スカルドゥで買った行動食です。
ビスケットドライフルーツが中心。どれも美味しかったです。
特にドライフルーツを売っているお店はスカルドゥに沢山あり、
種類も豊富でお勧めです。
こだわりが特にないなら
行動食を現地で買う事も遠征の楽しみの一つかなと思います。
こちらが日本から持ち込んだ行動食です。
おつまみ系はBCで食べました。
日本でもいつも食べている行動食なのですが、
中でも高所で食べやすかったのは
羊羹!
喉越しが良くて甘いのが良くて食欲が落ちているときも食べたくなりました。
【輸 送】
出発の1か月半くらい前に装備品の一部を
パキスタンに郵送し、エージェントに受け取ってもらいました。
日本~パキスタン間は現在、船便がないので
航空便のEMSで送りました。
EMSは10日ほどで届きましたが、送料が高く、
200kgの荷物でおおよそ25万円位がかかりました。
(往復で送ったのでこの倍かかりました・・・高い・・・)
梱包・発送作業の様子です。
僕の家に7人全員が集まり、
プラパールボックス、ダッフルバック、樽を使い
装備を仕分けし、近くの郵便局に持ち込みました。
これは本当に大変な作業で二日間かかりました~。
ロープなどのクライミングギア、テント、食料など
無事に届くか少し不安もありましたが、
全く問題ありませんでした。
【テント】
BCとキャラバンでは
エージェントが一人一人にテントを用意してくれます。
1人で2~3人用のテントを使えるので
快適ですが、個人の装備品もかなりの量なので整理整頓がとても大切です。
BCでのレストの日などは自分のテントを掃除するのが
多かった気がします。
上部キャンプのテントは全てアライテント・エアライズ3にしました。設営のしやすさ、耐久性、重量、色々検討した結果、自分も学生時代から使っているこのテントになりました。
【クライミングギア】今回のルートはクライミング要素の低いところだったので登攀具は厳選して必要最低限としました。ハーネスやカラビナ、スリングなど一部のギアは少しでも軽くかつ使いやすいさを考えて買い換えました。クレバスレスキューの為のギアとして
ペツル・マイクロトラクション、パートナー、スノーバー、アイススクリューは登山隊員全員の必須装備としました。ロープは普段から使っている『エーデエルワイス・エリート7.8㎜60m』を使いました。
【登山靴】登山期間中に使ったのはこのスポルティバ・オリンポスモンズキューブSとにかくごつく大きい靴ですが、かなり軽量です(それでも片足1,100g位はありますが)。この靴があれば8000m峰にも登れる冬靴、と言うよりも高所用登山靴と言った方がいいかもしれません。当然、日本の冬山ではここまでの登山靴は全く必要ありません。定価はなんと約200,000円!!僕が持っている登山道具の中で一番高いですね・・・。
今回遠征に持って行った『靴』です。
サンダルは街中やBC生活で使い、右の登山靴(スカルパ・マルモラーダプロ)はキャラバンの行動中に履きました。キャラバンは雪のない登山道から氷河歩きまであるのである程度しっかりした登山靴が必要になると思います。あと、あると便利だったな~、と思うのは長靴!BCではうっすらと雪が積もることも多く、テント周りがドロドロになってしまい、そんな時は長靴があるメンバーは快適そうでした。
【シュラフとマット】シュラフとマットはBC用と上部キャンプ用に二つずつ用意しました。BC用:シュラフ ナンガ・オーロラライト600DX マット モンベル・U.L. コンフォートシステム エアパッド 120このほか、快適性を求めてピローも使いました。
上部キャプ用:シュラフ モンベル・シームレス ダウンハガー800 #0 マット ニーモ・Tensor Insulated Medium Mummy軽さと保温性からこの組み合わせにしました。シュラフはリミット‐13度のモデルでしたが、寒さを感じることなく寝ることが出来ました。
【通信機器】
通信機器としては用意したのは
衛星携帯電話・・・・スラーヤ、インマルサットを1台ずつ持って行きました。
主に緊急時用として使用。
ガーミン・インリーチ・・・・日本からの天気予報情報の受け取りや
日本への登山活動の進捗情報の連絡に使用。
アマチュア無線機・・・・・登山中のメンバー間またBCの連絡用に一人一台用意。
地形や機器のモデルにより感度にバラツキはありました。
ガーミンの「インリーチ ミニ」
以上3つの通信機器を用意しましたが、どれも使用頻度が高く、今回の遠征では必須装備の一つでした。
これ以上書くとあまりに長くなるので、番外編、ここまでとしたいと思います。思い入れが強いとついつい長文になってしまいますね。最後までご覧いただいた皆さん、ありがとうございました。
ここに書ききれないことが準備段階からたくさんあり、本当に貴重な経験ができた遠征でした。もし何か聞きたいことがあれば御連絡頂ければいつでもご対応いたします!
あらためてこの遠征にご理解、ご支援いただいた皆様へお礼を申し上げます。ありがとうございました。そして遠征を共にしたメンバーに心から感謝したいと思います。
記 白石店登山売場
小山田